パスケース オーダー 試作サンプル完成

前回のサンプル試作の続きです。

前回までの型紙と縫製前の段階での仮組みによる数値出しを経まして、試作品としてカタチになりました。
ここから最終的な検証作業をしていきます。

今回のオーダーは、御依頼主のお使いになる定期券の種類と枚数の御指定がありました。定期券ごとに改札を通る時の状況を考慮に入れて、収納スペースの配置を決めることが大切です。

上の画像は開いてみたところ。
奥の左側と手前の右側の下のスペースが、「非接触ICカード型定期券」の収納箇所。

右側の上に位置する開口がカーブしているスペースが、新幹線の乗車券や切符の収納箇所になります。

前回検証していた折り畳まれる屈曲部位ですが、今回使用する革の積層厚とカードの枚数から鑑みた数値決定は上手くいったようです。

折り畳んだ様子。
こちらのスペースは、上で説明した左側の1スペースの表側になります。
ここは「改札を通すタイプの磁気カード型定期券」の収納として使われます。

前回からの検証作業の結果、カーブの奥を覗くとチラッとフチが見える状態ですので、もう少しだけ収納部分を深くして改善できると思います。

全ての修正にいえることですが、その一部分だけを修正するのではなくて、どこか一つ修正箇所があれば、全体を合わせて調整することでバランスが保つことができます。
逆にそれでどこかに不具合が出るようであれば、それはそのことを見越した最初の設計がなされていなかったということ。
ベースとなる設計は図面の段階で、おこりえる事象を想定していなければ良い物は作れないと考えます。

逆の面です。
上で説明した右側二段のスペースのオモテ側になります。
必要要件から割りだした配置でもあるのですが、開いたときの左右のバランスが同じ枚数の積層になったことで、折り畳まれた状態を開いたり、手の返し時のバランスが、一方に偏ったスペース配置よりも良好なのではないかと推測します。

また面がフラットに仕上がっていたほうが、バッグやポケットに収めた時の落ち着きがよいので、出来ればどちらかの面はスムーズな状態に仕上がったほうが良いでしょう。

これで、大方の試作による検証作業も終わりましたので、使いやすくあることを前提にしながら、パスケース自体も傷みづらい物に仕上がるよう、納品用の本番製作に入ることが出来ます。

 

Λ.フルオーダー、仕様変更をしたがうオーダーの時には、全体もしくは部分的なサンプル試作による検証作業があるほうが完成度は上がります。

ここで御注意いただきたいのが、製品版に比べ革のグレードは少し下で、縫製や仕上げも程々なものです。画像だとわかりづらいですが。。
試作品の紹介で、ストーヴル製品版の品質と勘違いされても困りますので、印をつけることにしました。
とりあえず今回は最初ということで、【シサク】とか【試】と書いた革端材を添えてみましたが、小さくてわからないですねぇ。次はもっと大きくしてみます。

パスケース オーダー 試作 

前々回からの続きになります。

オーダー製作において大切な工程、試作サンプル。

とくに一品物・フルオーダー品・仕様変更があるものを拵えるうえでは、完成品となる実物に近いものを実際に組み上げ、使い勝手やルックス・堅牢度等を検証したほうが、計算のみでつくったものよりも確実に良いものが作ることが出来ます。

今回はフルオーダーとしてはすこしコンパクトなアイテムの定期入れ。
お財布やバッグに比べればパーツも多くはないので、少し説明しやすいので簡潔にではありますが、試作工程の大事なところを抜粋して載せようと思います。

上の画像。
定期券の収納部となる各パーツを切り出した後、開口部分に伸び止めを施し滑らかになるよう磨きあげます。試作ですからやらなくても大丈夫なところですが、気は心。
ちなみに、当方の作り方では裏全面に薬剤等を塗り付け磨き込むことは致しません。適材適所によって変えています。基本的には伸びが少ない方向性を守って裁断しているので、革質や厚みによる強度が担保されていれば、開口周辺のみしか加工は施す必要はないと考えます。
床(裏)面が自然のまま良い状態であれば、そのままでも十分平滑であるのが、革本来の床面ですから。必要以上に薬剤やコート剤を塗り込むのは良いことだとはおもえません。良くあるコート剤は湿度の高い環境ではベトついたり溶けだす可能性もありますし、滑らかさを求めてやった加工なのに、バサッとほぐれてザラザラとした質感に変わることも多いので、革工芸の教書やマニュアルの良くない指示の一つだと思います。
絶対にやめたほうがよい「ウラ全面のトコヌールやCMC」なんてね。
やはり適材適所。

試作の時には、製品版に使用する上質な部位に比べ、少し繊維の粗かったりシワや小傷の入っているところを使います。画像の革の床面(裏面)の繊維が緻密でないのがわかると思います。
しかしながら、緻密でなくてもシッカリと堅牢な部位はあるもので、その辺は断面からも目視と触れて確認することで、ほぐれやすくはないか選定し使用するかを決めています。

この革自体良い鞣しのものなので、粗い部分でも絡みが良く試作の検証用にはピッタリの革といえるでしょう。
※検証用にカタチをみるだけの用途なら紙でも作れるわけですから厳密にしなくても良い部分ですが、より本物に近い状況で検証したいもので。。
試作するうえで要点となるところは数限りなくあります。
なので、大きく端折りまして、上の画像はパーツを接着し本体となるパーツに合わせながら、計算上の寸法のまま組み上げて大丈夫かを検証しているところ。

実際に御依頼主の収納する定期券と同じ状況を再現するように、サイズ・厚み・枚数をあわせ収めた状態で検証してみます。
ここで大事なポイントは、赤⇒のところ。
ここでの数値出しが「使いやすさ・収納性・その後の製品寿命や壊れにくさ」につながっていく重要箇所なのです。

上の画像も試作サンプルを仮接着のみで、実際にカードを収めて折り畳んでの治まりの良さを確認しているところ、なので縫製やコバは揃えておりません。
開口部がカーブしたラインであることで、取り出しやすく型崩れもしにくくなっていますが、もう少しだけ深くしたほうが良さそうです。カードのフチが見えていますものね。
※このようなちょっとした塩梅を見きわめるのもサンプル試作でしかありえません。

この赤い⇒部分の距離が短くても長くても、傷みの原因となります。
折り畳まれる構造の革製品にとって、この部分が最大のウイークポイントでもあるのです。だから本当にとっても大切な検証。革の厚みや質感でも状況は異なってきますから、より正確な検証と改善をして作りたいのであれば、やはり同等の革素材でやるしかないともいえます。紙では無理なところ。

ちなみに今回は、計算上の寸法よりも、この検証作業の結果1.5mm変えて作ることが正解との結果になりました。
勿論、組み上げてから再度検証いたします。その為の試作サンプルです。

そういった意味では、試作サンプルは机上計算と型紙が正しいかの確認作業でもありますから、完成するまでに最低二回の改善が出来ることになるということです。

修正追記中。。。

上高地

訪れてから少し時間が経ってしまいましたが、先月末に訪れた上高地について記します。
長野でも岐阜との県境にほど近い北アルプス沿いに位置する上高地では、10月も終わるころには既に晩秋~初冬のような気温です。

そのため色づきもはやく、おおかたの紅葉は落ちつき、既にカラマツを残すのみといった時期でした。
ここ上高地では他の地で見られるものよりも数段大きく高く感じます。
枝ぶりも見事!見惚れてしまいます。

今回は急に思い立ってのショートトリップでした。
思い返してみれば20年近く来られていなかった。
入り口の釜トンネル前の国道は何回も通っているのに。

大好きな場所ゆえに、遠ざかったといいますかね。
もう少し心が整った状態で来たかったのかもしれません。
しか~し今でも、そんな心境にはなっておらず、いつもバタバタしっぱなしなのですが。(笑)

昔、真夏や紅葉の最盛期に訪れた時の気持ち良さは最高なのですが、新緑前の寒い時期に来た時や今回のように少し遅めの秋というのも本当に良いものです。
雨降りや曇りの時もありましたけど、個人的にはそれでも構わないと思っています。

山と空気、水も木も別格ですから。

いつ来ても美しいアズサ川が流れています。
私にとっては、それだけで十分なのです。

 

Λ.当日の行程メモ。
前日の夜に出て早朝に沢渡駐車場着で少々仮眠、AM7時台のバスで現地入りしました。
(通年マイカー規制のため)
今回は三人連れでしたのでタクシーではなく初めてバスに乗りましたが、これが快適で眺めもよく、揺れる感じも風情があって宜し。
梓川沿い緩い山道を明神までゆっくり歩き、対岸に渡り戻ってくる定番のハイキングコースでした。
次の機会があれば、テントをもって徳沢や涸沢まで行ってみたいですね。

※.上高地のオフィシャル的なブログでの現地情報について。
久しぶりに訪れる自分のような者にとっては、とてもありがたい情報でした。
しかしながら、載せてらっしゃる紅葉のライブ情報は、実際の日付や時間よりも少々タイミングがズレているのかもしれません。
私は行く数日前から現地レポート見ていましたが、ブログチェックした当日数時間後に現地で見た感じでは、色付きかた等にタイムラグがあるなとの印象をうけました。
この季節に紅葉を目当てに赴く方は、情報よりも少し早めに動かれたほうが良と思われます。
まぁ私の場合は前述したように、どの季節/タイミングでも来られるだけで嬉しいのであまり関係ありませんが。。

ただ紅葉のトップシーズンは混みます。
沢渡バスターミナルの係の御方のお話では、「先週末(10月中旬頃)は、始発はAM4時40分ですが、3時台には既に300人以上が並んでいました。」とのことです。
少しだけ時期をずらした私の訪れた日には誰一人並んでおりませんでしたから、皆様どれだけ紅葉を目指し訪れるのかということですね。

.

 

パスケースオーダー 試作用の型紙作成 

現在、定期入れの御注文品を作っています。
パスケースに限らずオーダーで作製する場合には、御依頼主の使用されている環境や収納する物の種類や形状、その大きさと量、等々の情報が大切になります。

今回の製作は定期入れですから、定期の種類や収納枚数、使われるときの手の動きや改札での使用状況など、細かく検証し仕様を決めていきます。
フルオーダーの場合はとくに、この検証と打ち合わせがあってこそ、市販品とは異なる自分専用の使いやすいカタチに仕上がる可能性が高くなるので、お電話やメールでの打ち合わせ・ご相談はとても大切な工程です。
製作の前段階というより、製作そのものの第一段階といえるでしょう。

一般的に「定期入れ」の印象といえば、革製品の中では小さなものとうけとめられていることと思います。
ですが、その使用頻度や重要性からすれば最も身近で大切な革製品であるにもかかわらず、機能や収納枚数などで本当に気に入ったうえで使われている方は少ないのではないでしょうか。
その方ごとに使われる環境や収納枚数も異なるわけですから、どうしても市販品では最大公約数的な物が多くなるのも仕方のないところです。

定期券には、感応式のICカード型と自動改札に通すタイプでは大きさや厚みが異なりますし、切符などの乗車券もいくつもの大きさがありますから、収納する可能性のあるもの同士を組み合わせた時に上手く機能するよう設計する必要があります。

そういう意味では、クレジットカードのサイズをもとにした一般的な「カードケース」を作るよりも、「定期入れ」(パスケース)ではカードや定期券/乗車券個々のサイズの違いと、使用する状況とのバランスを考えた数値出しと構造が余計に必要になるともいえると思います。

そこで、まずは試作用のパターンメーキング(型紙製作)。
上の画像は、御相談のなかでわかってきた仕様要件とデザイン(カタチ)を考えながらミリ単位で数値を決めているところです。

頭の中も机上も雑然としているのですが、実線を引いたり革を触りながら資料を脳内シャッフルして「あーでもない。こーでもない」を繰り返していきますと、少しづつカタチがが見えて参ります。
当方の場合、その場での検証による意匠決定と数値出しもしますが、それに加えて今まで作ってきた同ジャンルのアイテムや習作等のサンプルや資料も引っ張り出してきまして、再度修正点等ないか計算/検討のうえ、紙の上にパターンとして嵌めこんでいきます。

勿論、作図はCADではなく手書き。
製図用の細いシャープペンシル、もしくは削りこみ尖らせた硬めの鉛筆をつかい、方眼紙に線を入れる作業は気持ちのよいものです。

 

Λ.サーバーを引っ越してSSL化後、はじめての投稿でした。
やっとこちらを運用できまっす。

こちらの新ブログのほうも、よろしくお願い致します。

革屋さんへ行ってきましたよ。

昨日はGS仲間でもある先輩の革選びに同行し浅草橋~墨田方面へ出張してきました。
向かう先は、私がお取り引きしている革屋さんの中でも、いつも細かなオーダーにお応えしてくださる皮革専門店さん。

その先輩、長く広告業界などで御活躍しながら、大学でもグラフィックを教えている先生です。

昔は当たり前に手作業ですべて行っていたデザインのお仕事も、現在ではコンピュータを使っての作業が殆どになったとお聞きしました。

そこで失れつつある手作業の大切さを伝えるべく、実際に手を動かし作ることを実践された授業を行ってらっしゃいます。
物の質感を目と触感で捉えられるように、様々な素材(とくに天然の材料)が必要とのこと。

そこで今回はリアルレザーを調達したいとの御相談を頂きました。
そのなかでの御要望は大きく三点。

・牛のカタチと大きさがわかること
・革本来の荒々しさ(シボやシワ等)残る表面
・ブラックレザー

この三点から私が推測したのは、本革の質感や生命の痕跡を感じられることがポイントとでも言いましょうか。

やはり大きさと形から受ける印象は、元々生きていた牛の迫力と凄みが感じられるでしょうし、部位ごとに異なる風合い・繊維の流れ・緻密さ粗さを比較し感じられると思います。

通常多くのレザーでは、表面が平らになるように丸みのある皮を伸ばして圧をかけるなどして平滑に仕上げるんですが、今回の革はその工程を最小限にしてシワやシボ(表面の凹凸)を残した革です。

教材サンプルとしての色ならば、生成りのナチュラルカラーが相応しいとお思いの方もいらっしゃると思います。最初は私もそう思いました。でも、よく考えてみると本当のリアルって其のままということとは違うとおもうのです。たとえるならば、昔の写真や映画は白黒やセピアがかったモノトーン画像のほうが、時代性や空気感までより鋭敏に感じられることがあると思います。それは素材にも言えることなのだと。

実際、シボや深いシワがあるこの革ならではの雰囲気は黒色だからこそ感じられる陰影や空気がありました。

今回の革、良い革だと思います。
こちらのざっくりとしたリクエストにお応えくださった革屋さんには感謝でございます。いつもストーヴルの我侭なリクエストにお応え下さり良くして頂いております。

この革に触れることで、多くのクリエーター志望のみなさんに何かを感じて頂けたら嬉しいですねぇ。

Λ.製品を拵える前提ではない革選びってなかなか無いことなので、とっても新鮮でした。自分も勉強になりました。

.

コインケース製作と その心もち その2

前回からの続きです。

コインケース、形になりました。
今回の個体は本場米国製のシニュー糸を使用。
シニュー糸の特長でもある太さ調整。先ず数本(4~6本)に割き、太さを調整し撚り直し造作に最適と思われる手縫い糸に仕立てなおし手縫いしました。

革が良質部位なこともあり、糸はシッカリと革の丸みに追随し縫製ラインに嵌まりこむよう治まっています。

こちらの画像は硬貨を収納する側、製品でいえば裏側から見たところです。
表側から見たシルエットとは違って、更にふっくらとしたフォルムに仕立ててあります。こうすることで内容量を確保し、ケース自体は小ぶりながらそれなりの硬貨を収納できます。

平面的な状態で供給される革素材ですが、元々生きていた時は丸みがあって存在するものです。
それを再現とまではいきませんが、革の持つ柔軟性と元々の丸みを活かすよう無理のないフォルムに形作ることを大切にしています。

自分の考えですが、本来あった以上の立体を出す時には、構成パーツの割り振りを別けて立体化するほうが革に優しく無理のない物になると考えています。
大きくカパっと開きます。
参考画像では、各国の旧硬貨(大きめなコイン多し!)を入れてみたので、解りづらいですが、それなりの量が収容可能。

カブセ部分がが受け皿となり硬貨を受け止めますので出し入れも容易です。
またその外周部の補強を兼ねて縫い付けられた見返しパーツが、硬貨が飛び出さないように防壁の役割もになっています。

横方向から見た様子です。少し斜め上からの画像なので平面的に見えますが、実際には大きな貝のような立体感があり。
お客様からは思っていたよりボリュームがあるとの感想を頂くことがありますね。

それは実測値よりも革のもつ雰囲気や質感の影響で、実際よりも重厚に大きく感じられたこともあるのではと推測。本革って素材はホント存在感ありますからね。

おおよそですが、厚みは【2.5~2.8センチ位】
革の質感や、それによって漉きあげる厚み調整によっても変わってまいります。

ちなみにサイズを申しますと、【横幅80mm 縦寸67mm】 ほどです。

 

ちょっと戯言ってみます。(笑)
マチを使わす革の硬度を活かし立体化することで強度を保ち、尚且つ外観がプレーンに仕上がったコインケースは殆ど存在しないと思います。

その秘密は設計や素材にもありますが、この型に関して一番のポイントは最高品質のスナップ金具を内側に入れ込んだことで実現できました。シンプルに見えるこの造作ですが、立体化される前の平面の状態で、予め計算通りに金具を取り付け、立体化した後にも上手く留まるように作ることはそれなりに経験を従う作業なのかもしれません。
他ではあまりみられない素材と構造の組み合わせではないでしょうか。

作り手には面倒で作りづらく、見る方にとっては只々普通に見える仕上がり。
ストーヴル製品はどれもそんな感じの取り組みばかりしておりやす。
なんか報われない感が半端ないのが、うちストーヴル工房なんすかね。。

 

本題に戻りまして。
前回からの表題は何とはなしにきめたのですが、気がつくと【心もち】なんて大きなことになってました。

それほど大それた思いというほどのことはないかなぁと思うのですが、いつも第一に考えるのは、御依頼主の御希望にできるだけ添えるようにつくること。もちろん喜んで頂くことは作り手にとっても本当に嬉しいことですし。結果、長く御使用頂けることにつながると思うのです。

あと同じくらい心にあるのは、革が報われるようにしたいという思いです。感覚的なことで当初は自分でも無意識な部分でしたが、落ち着いて考えるとそのような思いから向き合っていることに気づきました。
生きてお肉になって人間皆のために生産消費された動物達がいます。
副産物としての存在でもあるレザーですが、微力ながら自分をはじめ作り手達の多くが長く使えて愛されるに値する物を作ることができれば、少しは許してもらえるのかなぁと勝手に思いこんでいる感じです。

それらの思いをベースに少しでも良いものに近づけるためには、革に無理が掛かる造作は致しません。
世間で多くの方々がネガな物と勘違いされているシワや小傷(生きていた時について癒えた痕など)は堅牢度に影響が殆どないこと、愛すべき印でもあるそれらを用いた造作は表情となり愛着につながっていくということを御理解頂けるように努めなければならないと感じています。

少々綺麗ごとを書きすぎたきらいがありますね。

革が魅力的で好きだということ、そこだけは嘘のない真実であります。

 

.

コインケース製作と その心もち その1

stovl leather logでもお知らせしているコインケース。
ストーヴルレザーでは以前から立体感のある小銭入れを幾型も作ってきました。
今回の形は外装部に留め金具などをもたないルックス的にはシンプルなモデルで、ここ数年コインケースの定番品としてつくっているカタチ。

自分の場合だけかもしれないですけど、コインケースやキーケース・キーホルダーなどのわりと小さなアイテムを作る秘訣は、小さくシンプルな物だからといった心持ちを捨てることから始まります。

小さい・シンプルといった思いこみを最初にもってしまうと、やはりそれなりの仕上がりになってしまうものです。

作り手としては、大きなもの/複雑なものと同じように取り組むのは当たり前のことではありますが、実践するのは簡単なことではありません。実際市場で市販されている物の多くは、メーカー側から廉価版との捉えられ方で作られてはいないでしょうか。
生産性だけを考えれば、シンプルなもの小さなもののほうが、シッカリとしたものを作れば効率や採算性は失われていく傾向があるのも事実です。

小さく・シンプルな物ほど、いつも以上に手間を惜しまず作ってきたいものです。

おっと話を戻します。
当方のコインケースは、収納容積を確保するためにマチとなるパーツを使用していません。多くの場合、革を立体化して容積を確保するのがストーヴルのやり方です。

革を立体にするには革自体はもちろんのこと構造体としての硬度が必要になります。それを実現するためには革の厚みの決め方がとても大切になるのですが、革の質感によっても、その最適値は変わってきます。
作るアイテムや革の種類ごとにストーヴルの考える最適値が存在します。

このコインケースの場合、その理想値にそった厚みのままでは、厚過ぎて開閉留めの金具をカシメることが出来ません。(金具の足部分の長さが選べる物もありますが)
そのため、金具をカシメる付近だけコンマ数ミリ漉き削りこむ必要があります。(目打ちの先にある小さな穴がスナップ金具の嵌まるところ)

削り込む革の床(裏)の表情が崩れずなだらかになるよう革包丁を使い手漉きで仕立てていきます。これが結構地道な作業でして、牛歩のような進度で慎重にに仕上げ金具とのカシメ具合を見ながら調整。
おそらく今までストーヴル製品のユーザーさんの中で、こういった加工がされていたことに気づかれた方は殆どいらっしゃらないのではないかと思います。

どこにも違和感なく普通に見えて、使う方には何も不具合なく感じられる。
これがストーヴルにとっては理想の仕上がりかたなんです。

ちなみにうちで使っているスナップ金具は良いものですよ。(笑)
凸側は真鍮削り出しの物(画像のはそれにメッキかけてあるタイプ)で、それを革にカシメる裏側の部品は銅の無垢材なんです。
製法や素材そのものの質感だけではなく、留め/外すときの「コクッ」とした節度感が他のスナップとは全く違います!
これに出会ってからは他のスナップは使えなくなりました。

画像は、縫製やなんやら幾つもの工程を飛び越えて既に形になった状態。
全体の立体化も済んで、形状安定後に全体のシルエットを調整しているところ。

私の場合は、革断ち包丁を使いコバを均して、縫い引き締めることによって断面にあらわれる糸の太さ分の凹凸や、裁断や縫製工程だけでは取りきれない革の癖やうねりをコバの面取り調整をすることでより美しいシルエットに修正していきます。

このコインケースの丸みのあるシルエットは滑沢ゆえ、持ちやすさや使いやすさも考慮して、コバのエッジをどれくらい落とすかも質感向上の大事な要素になります。
これらの工程は、追及すればするほど本当にきりの無い作業でして、どこで終わりにするかの判断はとても難しいものです。

この後、コバに磨きを入れ、補油メンテナンスと続き完成に近づいて参ります。

その辺は、また明日以降「その2」でお伝えしたいと思います。

 

 

革仕事以外もね。

こちらのログは始めたばかりですから、今まで続けてきたエキサイトブログに比べるとアクセスが多いとはいえない状況です。

エキサイトからそのまま記事を引っ越しできない都合(システムやなんやら)もあり、こちらの「製作/log」の投稿数が増えていかないと検索結果に反映されず皆様の目に留まらないので(新規のお客様は検索でお越しになることが多いため)、このままでは見て頂く機会がふえません。
今までSEO対策をしてこなかったので今更な感もありますが。。

たまってしまっている革仕事の製作記を書くにしても、当方のやり方では深いお話や長文になることが多く、文才がない自分にとっては、そのような長文駄文でも記すのにそれなりの時間が掛かってしまうわけです。
物の大小や価格帯に関わらずどのような製作においても取り組み方が変わることはないのですが、結果的に印象に残る物や御依頼主とのやり取りが心に残ったものなどあるのも事実でして、そのようなアレコレも記していければと思うと同時に、作り手書き手のエゴとして、記事を皆様方にも見て頂ければ嬉しいという思いもあるわけです。

そんなことから前述したような事情があるなかで安易に載せてしまっても、ブログ形式の宿命で記事が下のほう奥のほうにいってしまえば読んで頂く機会も減ってしまうでしょう。

書きたい思いが強いこのタイミングにちょっと辛い心境でもあるのですが、この課題はもう何年も前から考えてきたことであって、エキサイトのほうに製作記を書くのが滞った理由の一つでもあります。

エキサイト自体は書きやすくデザインも好きでしたから今でも気に入っているのですが、当初はなかった広告が大量に入るようになり、スマートフォンでも読まれることが多くなった現在では、今までのようにパソコン端末で見られることを前提にした画作りや表し方では難しい時期になってきたというのも大きなポイントでした。

どちらも続けたいですが、見に来てくださる方には解りづらい状況になってしまうでしょうし、革ログとして続けていくには散漫な物になる可能性も否めません。

そのような事情のあるなかで大きな障害となっているのは、簡単にはブログは引っ越せないという問題です。
とくにエキサイトブログの場合には他のブログサービスに引っ越すための方法が用意されておらず、システム的に他にいきづらいということがあります。

仮の方法で出る方法がないわけではないのですが、画像のアドレスは元のままだったりいろいろと課題が残ります。
手間は掛かりますが、一つ一つの記事をコピペして引っ越すといった方法もあるようですが、これも課題がありまして。。

ネット上では、同じ内容や記事を別のブログやサイトにアップしますと、大手検索サイトからペナルティをうけて、ネット上から見えないよう、検索で調べにくい状況へと追いやられてしまうことがあるそうで、重複記事や類似する文章は投稿できないといった事情があるんですね。

以前の投稿をこちら側に大幅なリライトすることも考えていますが、書いている人が同じでは表現が類似してしまうでしょうから検索エンジンからは違反投稿と判断される可能性が高く、またエキサイト側の記事を削除もしくは非公開にしたとしても当分の間はキャッシュとして残ることで二重投稿記事と判断され盗作やなんかと勘違いされてペナルティを受けないとも言いきれません。
もう受けてるかも・・。

このような事情があるので、今は書きたい気持ちが強くあっても、もう少しの間は革とは異なる別の日々の出来事など、よくあるブログ的な内容も投稿していくことが多くなると思います。

自分も辛抱ですけど、こちらにお越しいただく方々にとっては期待外れな感じにならないか心配であります。
しかしながら今後も長く続けていくために今は投稿を積み重ねていくしかありません。

物好きなストーヴル佐藤、趣味のお話や雑想的なアレコレもないわけではなく、このような機会を良いチャンスと捉え少しづつその辺にも触れさせていただこうかと考えております。

 

上の画像は【八咫烏】が描かれている提灯。
熊野神社の守り神でもある三本足のヤタガラス様。

土日は地元川越の夏祭りで、町中の通りでは色とりどりの鮮やかな提灯で華やぐなか、近所のお熊様ではモノトーンの灯りが幻想的でした。

そうそうJFA日本サッカー協会のエンブレムでも有名ですよね!

ブログ投稿テスト

当ホームページ「stovl.net」内の【製作/log】において日々のアレコレや製作記等を投稿して参ります。 ※2018/7/24記

現在のところ、当分の間はhttps://stovlgs.exblog.jp/【stovl leather log】を残しながら、
こちらには革のお仕事を中心とした記事や写真を載せていく予定ですが、

今後はエキサイトブログをどうするか、両方別の内容で続けていくか、統合するか等、落ち着くまで少々時間が掛かると思います。

これからは是非こちらのほうも、よろしくお願い致します。