前回のサンプル試作の続きです。
前回までの型紙と縫製前の段階での仮組みによる数値出しを経まして、試作品としてカタチになりました。
ここから最終的な検証作業をしていきます。
今回のオーダーは、御依頼主のお使いになる定期券の種類と枚数の御指定がありました。定期券ごとに改札を通る時の状況を考慮に入れて、収納スペースの配置を決めることが大切です。
上の画像は開いてみたところ。
奥の左側と手前の右側の下のスペースが、「非接触ICカード型定期券」の収納箇所。
右側の上に位置する開口がカーブしているスペースが、新幹線の乗車券や切符の収納箇所になります。
前回検証していた折り畳まれる屈曲部位ですが、今回使用する革の積層厚とカードの枚数から鑑みた数値決定は上手くいったようです。
折り畳んだ様子。
こちらのスペースは、上で説明した左側の1スペースの表側になります。
ここは「改札を通すタイプの磁気カード型定期券」の収納として使われます。
前回からの検証作業の結果、カーブの奥を覗くとチラッとフチが見える状態ですので、もう少しだけ収納部分を深くして改善できると思います。
全ての修正にいえることですが、その一部分だけを修正するのではなくて、どこか一つ修正箇所があれば、全体を合わせて調整することでバランスが保つことができます。
逆にそれでどこかに不具合が出るようであれば、それはそのことを見越した最初の設計がなされていなかったということ。
ベースとなる設計は図面の段階で、おこりえる事象を想定していなければ良い物は作れないと考えます。
逆の面です。
上で説明した右側二段のスペースのオモテ側になります。
必要要件から割りだした配置でもあるのですが、開いたときの左右のバランスが同じ枚数の積層になったことで、折り畳まれた状態を開いたり、手の返し時のバランスが、一方に偏ったスペース配置よりも良好なのではないかと推測します。
また面がフラットに仕上がっていたほうが、バッグやポケットに収めた時の落ち着きがよいので、出来ればどちらかの面はスムーズな状態に仕上がったほうが良いでしょう。
これで、大方の試作による検証作業も終わりましたので、使いやすくあることを前提にしながら、パスケース自体も傷みづらい物に仕上がるよう、納品用の本番製作に入ることが出来ます。
Λ.フルオーダー、仕様変更をしたがうオーダーの時には、全体もしくは部分的なサンプル試作による検証作業があるほうが完成度は上がります。
ここで御注意いただきたいのが、製品版に比べ革のグレードは少し下で、縫製や仕上げも程々なものです。画像だとわかりづらいですが。。
試作品の紹介で、ストーヴル製品版の品質と勘違いされても困りますので、印をつけることにしました。
とりあえず今回は最初ということで、【シサク】とか【試】と書いた革端材を添えてみましたが、小さくてわからないですねぇ。次はもっと大きくしてみます。