パスケース オーダー 試作 

前々回からの続きになります。

オーダー製作において大切な工程、試作サンプル。

とくに一品物・フルオーダー品・仕様変更があるものを拵えるうえでは、完成品となる実物に近いものを実際に組み上げ、使い勝手やルックス・堅牢度等を検証したほうが、計算のみでつくったものよりも確実に良いものが作ることが出来ます。

今回はフルオーダーとしてはすこしコンパクトなアイテムの定期入れ。
お財布やバッグに比べればパーツも多くはないので、少し説明しやすいので簡潔にではありますが、試作工程の大事なところを抜粋して載せようと思います。

上の画像。
定期券の収納部となる各パーツを切り出した後、開口部分に伸び止めを施し滑らかになるよう磨きあげます。試作ですからやらなくても大丈夫なところですが、気は心。
ちなみに、当方の作り方では裏全面に薬剤等を塗り付け磨き込むことは致しません。適材適所によって変えています。基本的には伸びが少ない方向性を守って裁断しているので、革質や厚みによる強度が担保されていれば、開口周辺のみしか加工は施す必要はないと考えます。
床(裏)面が自然のまま良い状態であれば、そのままでも十分平滑であるのが、革本来の床面ですから。必要以上に薬剤やコート剤を塗り込むのは良いことだとはおもえません。良くあるコート剤は湿度の高い環境ではベトついたり溶けだす可能性もありますし、滑らかさを求めてやった加工なのに、バサッとほぐれてザラザラとした質感に変わることも多いので、革工芸の教書やマニュアルの良くない指示の一つだと思います。
絶対にやめたほうがよい「ウラ全面のトコヌールやCMC」なんてね。
やはり適材適所。

試作の時には、製品版に使用する上質な部位に比べ、少し繊維の粗かったりシワや小傷の入っているところを使います。画像の革の床面(裏面)の繊維が緻密でないのがわかると思います。
しかしながら、緻密でなくてもシッカリと堅牢な部位はあるもので、その辺は断面からも目視と触れて確認することで、ほぐれやすくはないか選定し使用するかを決めています。

この革自体良い鞣しのものなので、粗い部分でも絡みが良く試作の検証用にはピッタリの革といえるでしょう。
※検証用にカタチをみるだけの用途なら紙でも作れるわけですから厳密にしなくても良い部分ですが、より本物に近い状況で検証したいもので。。
試作するうえで要点となるところは数限りなくあります。
なので、大きく端折りまして、上の画像はパーツを接着し本体となるパーツに合わせながら、計算上の寸法のまま組み上げて大丈夫かを検証しているところ。

実際に御依頼主の収納する定期券と同じ状況を再現するように、サイズ・厚み・枚数をあわせ収めた状態で検証してみます。
ここで大事なポイントは、赤⇒のところ。
ここでの数値出しが「使いやすさ・収納性・その後の製品寿命や壊れにくさ」につながっていく重要箇所なのです。

上の画像も試作サンプルを仮接着のみで、実際にカードを収めて折り畳んでの治まりの良さを確認しているところ、なので縫製やコバは揃えておりません。
開口部がカーブしたラインであることで、取り出しやすく型崩れもしにくくなっていますが、もう少しだけ深くしたほうが良さそうです。カードのフチが見えていますものね。
※このようなちょっとした塩梅を見きわめるのもサンプル試作でしかありえません。

この赤い⇒部分の距離が短くても長くても、傷みの原因となります。
折り畳まれる構造の革製品にとって、この部分が最大のウイークポイントでもあるのです。だから本当にとっても大切な検証。革の厚みや質感でも状況は異なってきますから、より正確な検証と改善をして作りたいのであれば、やはり同等の革素材でやるしかないともいえます。紙では無理なところ。

ちなみに今回は、計算上の寸法よりも、この検証作業の結果1.5mm変えて作ることが正解との結果になりました。
勿論、組み上げてから再度検証いたします。その為の試作サンプルです。

そういった意味では、試作サンプルは机上計算と型紙が正しいかの確認作業でもありますから、完成するまでに最低二回の改善が出来ることになるということです。

修正追記中。。。