コインケース製作と その心もち その1

stovl leather logでもお知らせしているコインケース。
ストーヴルレザーでは以前から立体感のある小銭入れを幾型も作ってきました。
今回の形は外装部に留め金具などをもたないルックス的にはシンプルなモデルで、ここ数年コインケースの定番品としてつくっているカタチ。

自分の場合だけかもしれないですけど、コインケースやキーケース・キーホルダーなどのわりと小さなアイテムを作る秘訣は、小さくシンプルな物だからといった心持ちを捨てることから始まります。

小さい・シンプルといった思いこみを最初にもってしまうと、やはりそれなりの仕上がりになってしまうものです。

作り手としては、大きなもの/複雑なものと同じように取り組むのは当たり前のことではありますが、実践するのは簡単なことではありません。実際市場で市販されている物の多くは、メーカー側から廉価版との捉えられ方で作られてはいないでしょうか。
生産性だけを考えれば、シンプルなもの小さなもののほうが、シッカリとしたものを作れば効率や採算性は失われていく傾向があるのも事実です。

小さく・シンプルな物ほど、いつも以上に手間を惜しまず作ってきたいものです。

おっと話を戻します。
当方のコインケースは、収納容積を確保するためにマチとなるパーツを使用していません。多くの場合、革を立体化して容積を確保するのがストーヴルのやり方です。

革を立体にするには革自体はもちろんのこと構造体としての硬度が必要になります。それを実現するためには革の厚みの決め方がとても大切になるのですが、革の質感によっても、その最適値は変わってきます。
作るアイテムや革の種類ごとにストーヴルの考える最適値が存在します。

このコインケースの場合、その理想値にそった厚みのままでは、厚過ぎて開閉留めの金具をカシメることが出来ません。(金具の足部分の長さが選べる物もありますが)
そのため、金具をカシメる付近だけコンマ数ミリ漉き削りこむ必要があります。(目打ちの先にある小さな穴がスナップ金具の嵌まるところ)

削り込む革の床(裏)の表情が崩れずなだらかになるよう革包丁を使い手漉きで仕立てていきます。これが結構地道な作業でして、牛歩のような進度で慎重にに仕上げ金具とのカシメ具合を見ながら調整。
おそらく今までストーヴル製品のユーザーさんの中で、こういった加工がされていたことに気づかれた方は殆どいらっしゃらないのではないかと思います。

どこにも違和感なく普通に見えて、使う方には何も不具合なく感じられる。
これがストーヴルにとっては理想の仕上がりかたなんです。

ちなみにうちで使っているスナップ金具は良いものですよ。(笑)
凸側は真鍮削り出しの物(画像のはそれにメッキかけてあるタイプ)で、それを革にカシメる裏側の部品は銅の無垢材なんです。
製法や素材そのものの質感だけではなく、留め/外すときの「コクッ」とした節度感が他のスナップとは全く違います!
これに出会ってからは他のスナップは使えなくなりました。

画像は、縫製やなんやら幾つもの工程を飛び越えて既に形になった状態。
全体の立体化も済んで、形状安定後に全体のシルエットを調整しているところ。

私の場合は、革断ち包丁を使いコバを均して、縫い引き締めることによって断面にあらわれる糸の太さ分の凹凸や、裁断や縫製工程だけでは取りきれない革の癖やうねりをコバの面取り調整をすることでより美しいシルエットに修正していきます。

このコインケースの丸みのあるシルエットは滑沢ゆえ、持ちやすさや使いやすさも考慮して、コバのエッジをどれくらい落とすかも質感向上の大事な要素になります。
これらの工程は、追及すればするほど本当にきりの無い作業でして、どこで終わりにするかの判断はとても難しいものです。

この後、コバに磨きを入れ、補油メンテナンスと続き完成に近づいて参ります。

その辺は、また明日以降「その2」でお伝えしたいと思います。